町の人々

町家を守り続け、後世に残す 町家を守り続け、後世に残す

町家を守り続け、後世に残す

村松 徹哉さん[職業:大工]|小浜西組

 小浜で生まれ育ち、現在は家業の工務店を継いでいます。代々、西組の景観を守り続けてきた工務店の4代目です。

 

 高校時代にはデザイン関係の仕事に就くことを夢見ていましたが、父の『建築もデザインする仕事の一つ』という一言がきっかけで、建築の専門学校へ進学。卒業後は、滋賀県の工務店に入社しました。滋賀県全域の様々な建築を請け負っているゼネコンですが、私は木造建築の担当部署に配属になりました。担当物件のなかでも湖東・湖北地域では、住宅を新築するにあたり、現在でも竹を編んだ土壁を使用したり、上棟の際は地域の方々が集まる風習が残っていることを知りました。伝統的な建て方をする建築物は、一般的な建て方に比べ、時間も手間も倍かかり、大変なことも多いです。しかし、伝統的な技術を保存し続けようとしている人達と出会い、建築の面白さに気づきました。滋賀県で7年ほど経験を積んだのち、小浜に帰り、家業である木造建築の仕事を始めました。

弊社は、小浜西組重要伝統的建造物群保存地区内に在り、大正12年(1923年)に曽祖父が創業し、祖父、父と継ぎ、現在に至っています。曽祖父の代から小浜の町家と深く関わっていました。大工だけでは、家は建ちません。家を建てるには、建具屋さん、板金屋さん、材木屋さん、瓦屋さん、左官屋さん、電気屋さん、設備屋さんと様々な業種の職人さんが関わっています。小浜西組周辺には、たくさんの職人さんが住んでいます。地元の職人さんで自分達のまちを作っているのです。

 

 現在、私は、小浜西組地区内の町家の改修に携わり、設計や現場管理、大工作業などを行っております。仕事の醍醐味としては、お客様との距離が近いという点です。ハウスメーカーであれば、分業制で、営業がお客様とコミュニケーションを取るため、大工とお客様が会話する場面というのは少ないです。しかし、地元の工務店は営業や設計、大工など全てを一人でやっているところが多いです。お客様の声をスピーディーに、且つ直接建物に反映できるため、一緒に創りあげていくことができるのです。これが信頼関係を生み、長くお付き合いさせていただけている理由なのではないかと思います。

 町家の魅力は、一つひとつに長い歴史があることです。建物の所有者が幾度となく変わり、その都度、生活環境にあった形に改修し続けられています。天井を解体した際に棟札を見ると、祖父、曽祖父が建てた建物であると言うことを現場で知ることも多く、ご縁を感じます。

 

現在の一般住宅は、30年から40年で解体するような時代です。古い町家は150年、それ以上残っているものも多くあります。自分が死んでも携わった建物は残ります。建築にも流行はありますが、後世に残しても恥ずかしくない仕事を心掛けています。

 

 空き家が増え過疎化が進んできた小浜西組区域内にも、近年、市外から移住される方が増えてきました。小浜の町家に魅力を感じ、空き家を改修して住まれている、子育て世代の移住者も多く、町に活気が出ているような気がします。

 

町家、古民家は暗い・寒い・狭いのマイナスイメージが先行してきました。しかし、最近若い世代の方にも少しずつ、町家のかっこ良さ、魅力が伝わってきているように感じられます。小浜にしかない町家を、これからも守り続けていきます。

Profile

Profile

昭和61年2月7日小浜市生まれ。
専門学校卒業後、建築の仕事につく。
小浜西組町並み協議会では建築委員長をしている。